だれかさんのすがたはへびのよう



帰る道うしろから
「だれかさんのすがたはへびのよう」
「だれかさんのすがたはへびのよう」
大勢の声がする
むかしそんなあそびがあった怖いあそびだった

「だれかさんのすがたはへびのよう」
「だれかさんのすがたはへびのよう」
「わたし?」
「ちがーう!!」
歩きだす

「だれかさんのすがたはへびのよう」
「だれかさんのすがたはへびのよう」
「わたし?」
「ちがーう!!」
静かさがあるだけ
歩きだす

「だれかさんのすがたはへびのよう」
「だれかさんのすがたはへびのよう」
歩いても歩いても声はあとついてくる
もう無視してこらえて歩く

「だれかさんのすがたはへびのよう」
「だれかさんのすがたはへびのよう」
家に入って
戸を閉めて
節穴からのぞくと
声たちのぬけ殻が重なりあって
だまったままある
うちのなかでは
おもて座敷に
母のぬけ殻とありったけのよそ行き着が
声も音もたてずに
華やいでいる

「だれかさんのすがたはへびのよう」
「だれかさんのすがたはへびのよう」


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「だれかさんのすがたはへびのよう」 2012.9